精神分析

【メモ】ウィニコットの「偽りの自己」、フィリップ・K・ディック『ユービック』

何か似ていると思いませんか? 一方,偽りの自己の組織化は,「ある特定の環境の失敗に対して.個人がその失敗状況を凍 結することによって自己を防衛」 (1954b邦訳 p177強調は著者) している側面をもち,これは正常で健康なことと考えねばならない。それは本当の自…

「力動心理療法の危機」

確かに 1970 年代の後半から、自己愛性の傷つきに対する敏感性の高い統合失調症や行動 化の激しい境界例に対する治療展開を基盤に、精神分析療法から精神分析的心理療法への 展開には画期的なものがあった。しかしその展開はさらなる発展をしているのか。当…

コフートの「自己の凝集性」・「自己の断片化」と、ラカンの「鏡像段階」・「寸断された身体」

この自己愛的脆弱性と関連して Kohut (1971, 1977, 1984) が使用する概念に自己の「凝集性(cohesion) Jというものがある。 Wolf(1988)によれば,この概念は比喰的なものであり,自己(self) という構造の構成要素がまとまりと調和を保っていることを意味し…

クリストファー・ラッシュ 移行対象の破壊

ラッシュは、確かに現在のアメリカ経済のテクノロジーは、基本的な生活必需品を十分にいきわたらせ、そして今や広告によって消費者の欲望をかきたて始めるところまで来たが、そこに生まれた消費文化は、物質に支配された文化、あるいは物質主義ではないとい…

三島由紀夫とコフートの理論

何か関係ありそうじゃないでしょうか 自分では十分俗惡で、山氣もありすぎるほどあるのに、どうして「俗に遊ぶ」といふ境地に成れないものか、われとわが心を疑つてゐる。私は人生を殆ど愛さない。いつも風車を相手に戰つてゐるのが、一體、人生を愛するとい…

買い物依存症の精神分析

中村うさぎさんに見られるようなタイプの買い物依存症って、精神分析方面の言葉で言うと、買う前は理想化され輝いて見えていた商品が買った後には脱価値化されゴミにしか見えなくなる、ということになるのかな。

「支配感覚の回復」としてのRPG(ロールプレイングゲーム)

大事になるのが、遊び、のもつ意義である。この年齢での遊びは、支配感覚の回復という幼児的な様式を表している。子どもが自由にできるオモチャの世界は、子どもたちが作り上げた港であり、自分の自我を修復する必要があるときにはこの港に戻る。オモチャの…

太宰治「春の盗賊」、クリストファー・ボラス『対象の影』第10章「虚言者」

次に物語る一篇も、これはフィクションである。私は、昨夜どろぼうに見舞われた。そうして、それは嘘であります。全部、嘘であります。そう断らなければならぬ私のばかばかしさ。ひとりで、くすくす笑っちゃった。 図書カード:春の盗賊 嘘を通じてしかパー…

ニーチェ、幼児的な全能感の開放による自我構造の崩壊→発狂

もう一つ,「 自己啓発セミナーの危険性」論文を紹介しておこう。この論文が「主体の他者依存性」概念のもつ批判力を表現しているからである。自己啓発セミナーは,親との関係で獲得し内面化した道徳的禁止や理想が心理的問題を生み出していると考える。だから…

森鴎外 肛門性格

こうもん‐せいかく【肛門性格】 〘名〙 精神分析で、性本能の発達の第二段階である肛門期に固着することによって生じる性格の類型。吝嗇(りんしょく)、気強さ、几帳面、潔癖がその特色で、強い場合には退嬰(たいえい)的、敵意的になるといわれる。 肛門性格(…

蟹嫌いの三島由紀夫と海老・蟹嫌いのサルトル 🦀🦐😱

サルトルのエビ・カニ嫌いは有名である。彼は甲殻類を、この世のものならぬ「別世界のも の」「別の宇宙から盗んできたのだ」と言っている。 ジャン=ポール・サルトルに関する病跡学的試論 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shukulib/40/0/40_KJ000071…

中島敦の病跡?

ともかくも、自分は周圍の健康な人々と同じでない。勿論、矜恃を以ていふのではない。その反對だ。不安と焦躁とを以ていふのである。ものの感じ方、心の向ひ方が、どうも違ふ。みんなは現實の中に生きてゐる。俺はさうぢやない。かへるの卵のやうに寒天の中…

動物虐待の心理学・精神分析

(『NCIS:~ネイビー犯罪捜査班 シーズン18 』「第10話 番犬」) 関係ありそうな引用の羅列 犯罪において、加害者は加虐-被虐的関係を下敷きとして加虐的部分に同一化する。加害者自身が無意識に憎む自己の部分は、犠牲者に投影され攻撃される。殺人=対象…

ラカン派界隈

症状の一般理論以降、ラカンは症状が持つ「象徴的意味の側面(症状の意味)」より「現実的享楽の側面(症状の根)」を重視する。精神分析がかなり進んでも人が症状を手放そうとしない理由は症状が持つ「現実的享楽の側面(症状の根)」に他ならない。 http:/…

植松聖 「融和された自己を維持するために周囲の人々からの特異的な応答を必要とする」自己愛性パーソナリティー障害の人

Kohut(1971、1977、1984)は、自己愛パーソナリティ障害の人は、融和された自己 cohesive selfを維持するために、周囲の人々からの特異的な応答を必要とする段階で発達停止 している、すなわち葛藤ではなく欠損が原点にある、と考えている。彼らは、これら…

【メモ】ジョン・シュタイナー『こころの退避』

抜き書き②ジョン・シュタイナー/「こころの退避」(1) - complain too much ヨシアキ @yoshiakiiiiiiii 00:00 これらの状況の重要な特徴は、患者は将来について頭がいっぱいであるということである。彼の現在の苦しみはマゾキスティックに耐えられているが、…

【メモ】原始的防衛機制

カーンバーグによる? 分裂 スプリッティングと呼ばれる。自我が弱い場合、状況のあいまいさや複雑さに耐えられない。そこで、どちらかの極に片寄せて、状況や相手を割り切ることで解決する。疑問や迷いを排除するために表象(イメージ)を分割しておくのが…

カーンバーグによる自己愛性パーソナリティ障害の特徴

「Kohutの自己愛性パーソナリティ障害論の批判的検討」上地雄一郎 https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/16104/20160527213806640550/141_143_152.pdf Kernbergの言う自己愛性パーソナリティ障害の特徴は,以下のとおりである。① 自己概念が非常…

「Putting the Boot In Violent Defences Against Depressive Anxiety」Robin Anderson (「弱いものに蹴りを入れる 抑うつ的不安に対する暴力的防衛」ロビン・アンダーソン)

google翻訳などで… https://www.taylorfrancis.com/chapters/edit/10.4324/9780429479410-4/putting-boot-robin-anderson 蹴りを入れる抑うつ的不安に対する暴力的防衛ロビン・アンダーソン 導入この章では、特定の患者が抑うつ的な罪悪感や不安の感情を自覚…

【抜き書き】『〈死の欲動〉と現代思想』トッド・デュフレーヌ

精神分析という中立的な鏡が眩暈を起こすような姿見となり、かつそうでつねにありつづけ、『エクリ』とフロイトの夢の本が旧約、新約の聖書なのであるとすれば、ラカンもフロイトも精神分析的な大義という集団(心理的な)効果において完全に断片と化した主…

グローバル資本主義の精神分析 -貨幣欲望と死の欲動-

死を回避し排泄物のうちに不滅の生命力を託そうとするこの願望が、 〈死の欲動〉に支配された〈生の欲動〉という神経症を生み出すのである。「死を受容しえないということは、死が、あらゆる正常な動物にとって生であると同時に死でもあるという現実から、皮…

『悪について』エーリッヒ・フロム トランプ現象

極度にナルシシスティックな集団は、自己と同一視できる指導者を強く求める。集団はそのナルシシズムを投影し、指導者は称賛される。強力な指導者に服従する行為――これは深層心理では共生と同一視される行為である――によって、個人のナルシシズムが指導者に…

>もし「憧れ」から理想化の距離が失われたとしたら、憧れは純粋の羨望へと変化し、その関係は崩壊の危機に瀕する。

❝もし「憧れ」から理想化の距離が失われたとしたら、憧れは純粋の羨望へと変化し、その関係は崩壊の危機に瀕する。❞憧れの病理-いわゆる「境界例症例」を巡って 鈴木國文https://t.co/FJTAkus811近頃、「憧れ」が「純粋の羨望へと変化し」た末に起きたように…

有島武郎 惜みなく愛は奪う(奪わない)

とりあえずメモです 有島武郎は、「私の小さな愛の経験」に基づいて「惜しみなく愛は奪う」というエッセーを書いている。彼はこの中で、「愛とは与えるものではなく奪うものだ」という事実を強調し、この主張をふくらませて、「(人間は)絶えず外界を愛で同…

【メモ】オットー・カーンバーグによる自己愛性パーソナリティ障害の特徴

① 自己概念が非常に肥大しているが,他者から愛され賞賛されたい欲求も過剰である。劣等感を示す者においても, ときどき自己が偉大 ・全能であるという感情や空想が現れる。 ②情緒が分化しておらず,喪失した対象への思慕と悲しみの感情が欠けている。他者に捨てら…

「抑うつ反応を体験出来ないことが自己愛パーソナリティの基本的な特徴である」

自己愛パーソナリティの主な特徴は,誇大性grandiosityや極端な自己中心性にあり,優越感と劣等感が互いに影響し合わずに共存している.他者の賞賛と是認を得るのにとても熱心で,他者を心要とするのに, 人を利用し搾取するだけで,本当に他者に依存できない.所有…

精神分析と陰謀論

フロイトやラカン周辺の言説を好んで引用しているとあるブログを久しぶりに見に行ったら、そこのブログ主がウクライナ・ロシア関連や安倍晋三銃撃事件犯人複数説などの陰謀論を好意的に(と言っていいだろう)引用する人になっていた・・・。 これらの陰謀論…

「弱いものに蹴りを入れる:抑うつ的不安に対する暴力的防衛」ロビン・アンダーソン

『現代クライン派の展開』収録 9 弱いものに蹴りを入れる:抑うつ的不安に対する暴力的防衛 ●ロビン・アンダーソン 現代クライン派の展開 - 株式会社 誠信書房 漫画家の方の山田花子の作品(『からっぽの世界』?)の中で、作者自身のこのような願望(弱いも…

「残酷さと心の狭さ」エリック・ブレンマン

『現代クライン派の展開』収録 乳児は一般的に部分対象としての母親から全体としての母親と関わるようになり、それを取り入れるが、その過程で理想的対象の喪失を経なければならない。その時「理想的乳房」に固執することで、理想的でない乳房を攻撃してあく…

本田透『萌える男』、ハインツ・コフート『自己の分析』

それぞれ、本そのものからの引用ではなく・・・ ※太字強調は引用者によるもの 『萌える男』 この本では、オタクはルサンチマンのかたまりであり、萌えアニメをあてがっておかないといつ暴発するかわからない犯罪者予備軍であると断じている。 白馬に乗ったお…