『悪について』エーリッヒ・フロム トランプ現象

 

極度にナルシシスティックな集団は、自己と同一視できる指導者を強く求める。集団はそのナルシシズムを投影し、指導者は称賛される。強力な指導者に服従する行為――これは深層心理では共生と同一視される行為である――によって、個人のナルシシズムが指導者に転移するのだ。指導者が偉大であればあるほど、支持者も偉大ということになる。その役割を担うのにいちばんふさわしいのは、個人として特にナルシシスティックな人間である。自らの偉大さを信じて疑わない指導者こそ、まさに彼に付き従う者のナルシシズムを共鳴させる。半ば正気でない指導者が大きな成功を収めることは往々にしてあるが、客観的判断力の欠如、敗北に対する憤怒、全能のイメージを維持したいという欲求から引き起こされる間違いが、破壊につながる可能性もある。

(『悪について』エーリッヒ・フロム)(太字強調は引用者)

 

ドナルド・トランプは自分の支持者のことをよく「素晴らしい」と褒めたたえるわけだが、これが御世辞・リップサービスではなく、どうやら本気で(?)そう思っていそうなところに病理があるのではないだろうか。