ロロイという使えない(使わない)貨幣

タブを介して周囲の人々やものごとと関係するトーライの人々が、タブを「使わない」ということは、すなわち関係性の網の目からの離脱を意味する。タブを「使わない」で貯め込み、ロロイにするというトーライ人の性向は、他者との関係によらない、「他ならぬ自分」を希求するものとして捉えることができる。だが、もちろん、生きている限り、彼らは関係の網の目から逃れることはできない。諸儀礼における権利・義務を放棄する人間にはそもそもタブを大量に貯めることなどできないからである。したがって、彼らは関係のネットワークの中の存在でありながら、同時に自らをそこから切り離そうという二つの運動を同時に行なう。

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