『私たちはどんな世界を生きているか』西谷修

 先住民が住んでいたところを白人の所有物にする。それを登記簿上の財産として売り買いして儲けるのが、不動産屋です。だから、「古いアメリカ」が回帰台頭するときに、「アメリカ・ファースト」を掲げて登場した大統領が、これまで「帝国」の政治に全然関与していない不動産屋のトランプだったというのは、まったく辻褄の合う話です。

 ついでに言うと、フランスの「ポスト・モダン」の哲学者などというのは、所詮「モダンの先へ」ですから、そのあたりのことがまったく見えていません。だからハーマン・メルヴィルが書いた『代書人バートルビー』を、受動性の積極性とか、中性的だとか言いますが、あれは英語を身につけてしまい、同化して生きるしかない先住民の生の衰退消滅を描いたものなのです(「これも『アメリカ 異形の制度空間』を参照してください)。